アリタレーションの犬熟語

口ばっかりでまるで実行しないことを表すイディオム表現に

He’s/She’s/They are all bark and no bite.
がある。「吠えるだけでまったく噛まない」。
何度も吠えるだろうからbarksと言ったらよいのにとも思うが、これはコンセプト概念としてのs無しであり、biteは一回も噛まないからbitesよりよい、という考え方もできるけれど、やはりbarkとbiteで頭韻を踏み、かつ互いにコンセプチュアルなs無しが、見た目、聞いた耳に快いということだろう。

s無しといえば、固定電話の留守電通達ボタンを押すと、
  You have no message.
という声がするタイプがあるが、何だか嫌いである。1個もないよあなた、とはご挨拶だなお前、何だクールに気取って、という反撥心が私の中に湧き起こるからだ。
  You have no messages.
のタイプもあり、こちらは、いろいろあると思ったんすがね今日はないっすよ、という感じがあるのでよい。

それにしてもなかなか上手い熟語である、このall bark and no biteは。

同じような表現に
  all talk and no action
もある。が、こちらは頭韻も脚韻もなくそのものずばりの決まり文句で、barkとbiteで引っ張っておいて、じわっと陰の意味をつかませていくというイディオムマジックが欠落している。

ちなみに、題名を忘れてしまったが、昔、犬を沢山飼っている悪王が主役の芝居に誘われ、野犬収容所(当時の名だったか)に録音しに行ったことがある。結構静かであったからそれなりに皆さんをけしかけたことである。その努力が報われて犬たちが光った作品になった。all bark and no biteの成功例である。

ちなみついでに、あるビジネスパースンから、彼の仕事相手のAT&Tとの交渉がなかなかうまくいかないという話を伺ったことがある。そのとき彼は、あそこはAll talk and talkですよ、と苦笑いをしていた。(義理の兄が働いていたことがあるから言うのではないが、コミュニケーションビジネスだから理想的な姿ではないかとも思われるが)

It’s all bread and no anko.と言いたくなるようなだらしないあんパンもたまにある。しかしこれには肝の頭韻がない。
頭韻矢のごとし、たとえば「駄洒落」と「要点」を並べて、
It’s all pun and no point.
と自戒したとしても、とりあえず作らないよりよいではないかと思う今日この頃である。


One thought on “アリタレーションの犬熟語

  1. 歌、映画、ドラマ、本、雑誌、本当はなんて言っているのか知りたい!は、私が英語を学ぶ動機の一つです。
    Rock got no rhyme ♪と歌った映画スクールオブロックは大好きですが、韻というか駄洒落だらけの英語の世界、先生のおかげで意味を取り違えることも減りました。これは駄洒落なのでは?と疑ってかかる癖がついた!(笑)

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