滑りやすい坂2

大岡山には坂がある。英語で岡はhill、坂はslopeとされる。規模的に、幅広い傾斜をhill、幅狭いものをslopeと呼ぶ。最近のヒット映画で、センスの良さ抜群の偉大なる娯楽作品『侍タイムスリッパー』には、「心配無用ノ介」なる時代劇のヒーローが出て来るが、そこから無理に想起されるのが「心臓破りヶ丘」だ。マラソンや自転車レースで参加者を待つ例の難関で、the heartbreak hill(slopeではなく)と呼ばれる。直訳が美事だが、heartbreakは「何かを失ったり敗北を喫したりして悲しみで胸が張り裂ける」イメージで、「悲痛ヶ丘(岡よりよいかも)」に近いかもしれない。(「ホテル悲痛館」はエルビスが止まりにいったホテルだ。)
  hillよりslopeは小規模だ。
  ラフカディオ・ハーンのMujinaには東京赤坂通りの「紀伊国坂」なる坂が登場する。ここで卵顔お化けの超常現象が起こるのだが、語り手(ハーンらしい)は、…which means the Slope of the Province of Kii. I do not know why it is called the Slope of the Province of Kii.と解説している。
  ハーンは、日本的物語を外国人読者に紹介するにあたり、「なぜ紀伊の国の坂と呼ばれているのか私にはわからない」と、余計な注釈をはしょって本題にすぐ行く(cut to the chase)ので失礼! で済ませることができるのだろう。ただ、日本人の語り手(私なども含めて)は、ここで立ち止まる方もいるだろうし、滑って転んで立ち直れない方もいるだろう。ハーン氏になったつもりで語ればそれでいいのかもしれないが(アクセントを付けたりして!?)、ただどう考えても日本人が「意味がわかんない」と言うのはいかがなものか。
  そこでこの部分をカットして進む方もいるのではないだろうか(実際一名存知上げている)。
  そういうぼくも転びそうになって立ち止まった。どうしようかなと思案したのだが、あ、これは語り手が狢(むじな)なのだ、えへへ、短い怪談の中で、the Slope of the Province of Kiiという長いフレーズを繰り返すような、学のなさそうな狢(失礼、狢)が語って遊んでおるのじゃ、という胸張り切るよな名案を思いつき、今日に至っている。
  

カナダ式タキシードの季節

Canadian tuxedoはファッション用語で、トップがジーンズ(jeans OR denim)のジャケットかシャツ、ボトムがジーパンの出で立ち。女性は下がスカート、あるいはデニムのドレスも可。

100万枚のセールス記録を誇る「ホワイトクリスマス」で一世・二世・三世と風靡し続ける歌手ビング・クロスビーが、カナダのホテルに上下のジーンズで入り、話題となったのが切っ掛けとか。
ファッションエチケットに反するといわれるが、なんのその、旅の恥はが旅の始まりになったのだ。
発音: クロスピーは英語では「クロZビ」となる。

1951

ジーンズをよくはくので、今年はカナディアンタキシードで正装して秋を歩こうかと思ったり。

the 21st century

うーむ、このdouble denim fashionだが、ペアになると、なんだかa little too muchという感じもあるが・・・。

頭韻矢のごとし /d/3連: do due diligence

due diligenceは「契約や承認をする前に行うしかるべき調査・分析・評価」という意味。

それを行うことを、/d/音3連頭韻で、do due diligenceという。

主に政治やビジネスの分野でよく使われるフレーズ。

  They didn’t do due diligence on such a huge loan.
  彼らはそのような巨額の貸し付けに関し、調査分析評価を怠った。

dueの発音は、英国語では「デュー」である一方、米語では通常「ドゥー」となるので、3連の場合には「ドゥードゥーディリジェns」のように聞こえる。
税処理なども明るく♪ドゥードゥーディリディリ♪?!でよろしくである。

「鍵を握る」の英語

メディアによく飛び出すのが、結果・勝敗などを左右する、大きな影響力を持つ、重要な役割や権限を持つ、といった意味で使われる「鍵を握る」という慣用句。これはそのまま次のような英語イディオムになる。

  hold the key
  carry the key

Wiki売りながら紀元前6世紀に、差し込んで回す鍵が発明されたとある。日本は飛鳥時代より存在とのこと。日本語慣用句の初出は小生不明なれど、英語イディオムは16世紀とある。現実の動作・状態から自然に生まれたに違いない。hold the key to …の形がよく使われる。

  Their new technology holds the key to extensive recycling of waste plastic.
  あそこの新技術が大規模な廃プラスチック再利用の鍵になる。

ガーシュウィン兄弟作のスタンダード曲Someone to Watch Over Me「サムワン・トゥ・ウォッチ・オーバー・ミー」の一節にあるのは、 

Although he may not be the man some
Girls think of as handsome,
To my heart he carries the key.
彼をハンサムと呼ばない
女の子もいるかも知れない
でも私のハートの鍵は彼が持つ

こちらは「鍵を携えている・持ちあるいている」という響きもある。(man somehandsomeのライムも絶妙である)

上の画像はキリスト教会の入口に見られる聖人像が持つ鍵で、複数であるのは聖書に、”I will give you the keys to the kingdom of heaven…”とあり、聖ペテロらが教会に、天国へ入るための鍵(権限)を与えたことに依るという。
一本頂ければとも思うが、向こうは石が固い。(一応:St. PeterのPeterの語源はstone, rockの意味故)




man someとhandsomeの押韻素晴らしい

Breaking!

6月に参加した演劇で再会した上野火山さんからFBに緊急投稿があり、確かに重いニュースなのでコメントしました。文化、常識への強烈な圧力を感じ、ある種ノンポリのぼくも心配事のひとつなので、火山の投稿と遠山のコメントを掲載します。

The Mystery Is Over!

For a lazy blogger like me, this vessel could’ve stayed a mystery forever. But thanks to two kind readers who did a little detective work online, the hazy puzzle is clear at last: it’s turned out to be an incense burner for laying sticks sideways! Shout-out to Kumako-san and Yumiko-san!!

ある香炉の花の宴! 

滑りやすい坂1

さだまさしの「坂のある町」というヒット曲がある。あの北海道の港町の、サンフランシスコ級の坂には遠く及ばないが、目黒区大岡山という坂の多い町で小学校一年から14歳まで育ったぼくは、日活映画『陽のあたる坂道』が世に出たとき、作品(子供なので見ていないけれど)に親近感を覚えると同時に、坂というものが昇格したように感じ、坂道の陽のあたる側を見ては、なにやら誇らしい気分に襲われたものだ。それまでいた北海道の町は、峡谷の平坦な部分にあったから、坂というものの思い出は皆無で、あるとすれば空知川の支流へ続く僅かな斜面を、凍った水面に向かってスキーで滑って転んで下りていったことくらいである。そういう子どもが、おおきな岡の頂きからタコが足を伸ばすように坂が延びている町に移った結果、見渡せないという閉塞感があったようだ。というのも、父の社宅はうぐいす坂という急な傾斜を下り切ったところにあったからで、坂の上がり口は「ふもと」と呼ぶようだが、そのふもとから歩いて、のちに自転車を買ってもらってからは漕いで上がっては、商店街へ買物の遣いに行き、床屋へ行き、(電話が入るまでは)蕎麦などの出前を頼みに行き、”お絵描き”の塾へ通い、ショウキュウ軒(漢字を覚えていない)にプロレスを見に行っては下って戻る日々が始まった。メーンな坂は数本あり、その中の学校に行く坂は土坂で、豪雨で出来た”川”を跨ぎ、滑りそうになりながら上り下りした。小学校へ続くこの坂は、雨期を知らない道産子には鬼門的存在で、truancyは「無断欠席」、長引くとschool refusal「不登校」となるが、truantな生徒にならなかったのは、夏に越してすぐの長雨の新学期に、お隣のマチ子ちゃん(これまた漢字を知らない)に手を引いてもらい新世界へ向かう泥道の傾斜を何とか上っていったというラッキーな出だしがあったからだと思う。

Day-long Blooms Live for Days! 

I got this “thing” at a tiny thrift store months ago because of its mysterious existence, and I still don’t know what it’s used for.


Recently I got some nichi-nichi-so, and at long last I think I’ve found a purpose of the thing–in my own sort of way, though.

Nichi-nichi-so or a little Russian-sounding nichi-nichi-ka is one of few summer flowers.
Its English name is periwinkle and the flowers come in a variety of colors, blooming till autumn, but alack, they open and go in a day, making the fallen sets of five petals a sorry sight.
So I took off the lid of the mystery vessel, filled it with water and put some of the fallen flowers in it.

It’s been three days now and they look happy.
I don’t know what I learned from all this, but it made me very happy!
Still it would make me even happier if you could let me know what the vessel is for.