ローリングストーンズのドラマー、チャーリー・ワッツが亡くなったというニュースで、ローリングストーンズがなくなったと一瞬感じたのは僕だけではないだろう。思えば彼はストーンズの立派な心臓であった。彼の打ち出す正確きわまりない強いビートのせいで、それまで普通に流れていた血液は、波打つように体内を駆け巡り、いても立ってもいられない気分にさせてくれた。その彼はというと、他のメンバーたちのようなスタンドプレイを一切しないという駄洒落を言わずにはいられない特異な存在だった。いつも公園に必ずやって来て皆としっかり遊んでは静かに帰っていくことを繰り返す無口で家のよくわからない子のようなチャーリー・ワッツ。バンドの仕事はジャズ演奏への情熱の火を絶やさぬための生業day jobだという割り切りの良さ。一度、フロントマンのミック・ジャガーが彼をMy drummer.と人前で呼んたとき、He’s my singer.と言い添えたという逸話も実話っぽい。あなたのビートに乗ってよく人生や心のあちこちを歩かせてもらいました。外風呂でラジオを大きくして聞いたSatisfactionから続くビート。こちらのハートが止まるまで打ち続けるでしょう。R.I.P.