先週の『ラジ英』から  mal-はバツなり

6月10日のComputer ProblemsではYou may have downloaded some malware.あなたはマルウエアをダウンロードしたかもしれない)、11日のTrain Delayでは、Due to a malfunctioning door, the train is temporarily out of service.(扉の誤作動で電車は一時的に運転を見合わせています)と、mal-が頭に付く語が登場します。

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mal-はbad, wrong, ill(不良、不全、不調の)といった芳しくない意味のラテン語の接頭辞です。

イタリア語で「空気」はオペラの詠唱と同じariaで、イタリア人医師が沼沢地の空気から高熱の病気が発生すると見立てて付けた病名がmalaria(マラリア、悪+空気)です。のちに蚊が媒介する(mosquito-borne)とされましたが名は変わっていません。

シェイクスピアの喜劇『十二夜』には、自由に生きる人間を無品格と糾弾しつつ愚かな行動に走ってしまうマルヴォリオ(Malvolio)なる人物が登場しますが、彼の名も英語でill will(悪意)という意味になります。

人名が出たのでもう一名。シェリダンの喜劇『恋がたき』に登場するひとりの夫人は、上級表現を目指しながらいつも1語だけ、似たような発音で意味のまるで違う語を使ってしまい、その都度、観客や他の登場人物たちを呆れさせます。彼女の名はマラプロップ夫人(Mrs. Malaprop)で、フランス語からの借用語malapropos(マラプロポウ 「不適切に」、apropos「適切に」の反意語)をひねったものです。

劇がヒットしたおかげで、こうした間違いがmalapropism(マラプロピズム)と呼ばれるようになり、彼女の名は文学史とポップカルチャーに定着しました。その発言のひとつに、”She’s as headstrong as an allegory on the banks of the Nile.”(彼女はナイル川の堤の寓話のように強情ですわ)があり、これはallegory(寓話)ではなくalligator(ワニ)と言いたかったのでしょう。

こうした発言のひとつひとつをmalapropismと呼ぶことができるので、malapropismsと複数にすると、そうした例を集めたものを意味します。和訳は「(言葉のこっけいな)誤用」などと歯切れが悪く、そのままの「マラプロピズム」がaproposでしょう。

最近では、「大量破壊兵器」をweapons of mass production(大量生産兵器)と呼んだ米国大統領のBushismsや、Tomorrow never comes.(明日は決して来ない)という格言を、ドラマーがTomorrow never knows.(明日は決してわからない)と誤引用したRingoismsがあります。後者は他のメンバーがそのまま歌のタイトルにしてしまったという英国の有名バンドの逸話です。

テレビでは『NCIS』シリーズの女性捜査官ズィヴァが、毎回(episode)必ずイディオムを間違えていました。これを楽しみにしていたファンは、彼女の突然の降板に落盤、いや落雁、いや落胆したことでしょう。以下、彼女のidiomatic malapropismsを集めたサイトZivaismsへのリンクです。http://ncis.wikia.com/wiki/Ziva-Isms

それにしても彼女の降板には僕も大いに落下傘致しました。

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