いつものかすかな鳴き声がするけれど、見回してもどこにもいない。と、見上げればダコタ。
日差しの強い上天気にトタン(tin)のひさし(eave)で日向ぼっこ中。「ひさしとは小型の屋根」という定義から、イディオムlike a cat on a hot tin roofを想起。
その心は、焼けたトタン屋根の上にいる猫のイメージに、心配や緊張が過ぎて居ても立ってもいられないことを重ねたもの。
ダコタの場合は、冬でもあり、屋根がそう熱いわけではないようで、MGM映画のライオンのように悠々たる風情。ライオンをbig catと呼ぶのもむべなるかな。
戯曲家テネシー・ウィリアムズは自作に、「欲望という名の電車」「ガラスの動物園」「去年の夏突然に」「イグアナの夜」「バラの刺青」など、一度聞いたら忘れられないタイトルをつける名人でもあり、この長いイディオムを借りたタイトルも立派。米国南部のイディオムが、この作品で世界に。
同様のイディオムにlike a cat on hot bricksと、熱いレンガの上に猫が乗る
ものもある。
近年、トタンということばはあまり聞かなくない。
ウィリアムズ原作のあの映画が出た頃には、トタンと言ったトタンにわかったものですが。
英語でtin。
例えばあの『オズの魔法使い』のハートを持たない錫色のクリーチャーはThe Tin Manあるいはthe Tin Woodsman(「ブリキ男」)として有名。
トタンとブリキだとブリキがより高級らしいが、英語に関する限り、tinでまとめられることが多い。熱いブリキ屋根の上の猫も有りそうだが、傷がつくとすぐ錆びるブリキは屋根には向かないそうだ。
ブリキ男は「ビバリーヒルズ じゃじゃ馬億万長者」のバディー・エブセンが演じるはずだったのだが、銀色メーキャップの中にあるアルミに負けて降板したことは有名。彼はそのあと、リハビリに大変苦労したそうで、その彼を救ってしっかり歩けるようにしたのが、殺陣師のマイケル・ヴェンドレル。マイケルはテレビ映画「ロスト」シーズン1,2の殺陣を担当。僕はハワイで知り合った。座頭市の真似が刀使いまで含めて絶品。お互いに市さんの声色を真似たり、彼の一押しという「笠間の血祭り」に熱弁を振るったこともあったが、逝去された。フレンドリーな獅子のような人だった。懐かしい。