新春の詩 ウィルコックスの「ダイアログ」

エラ・ウィーラー・ウィルコックス(1850~1919)は、飾らない語彙で人生の明暗を綴った韻詩を得意とする米国の詩人です。
その作品Solitudeの一節、Laugh, and the world laughs with you; Weep, and you weep alone… (笑えば世界が共に笑う、すすり泣けば一人すすり泣く・・・)は、英語圏のポップカルチャーに根付いています。
この「新年:ある対話」と題した詩は、The New Year(新年)が一人のMortal(生ある者=人間)を訪れるというシチュエーションで、いくつもの名を持つ訪問者が、硬く閉ざされた扉を開かせようと対話を続けます。

New Year: A Dialogue by Ella Wheeler Wilcox

MORTAL: The night is cold, the hour is late,
the world is bleak and drear;
Who is it knocking at my door?

THE NEW YEAR: I am Good Cheer. 

MORTAL: Your voice is strange; I know you not;
in shadows dark, I grope.
What seek you here?

THE NEW YEAR: Friend, let me in; my name is Hope.

MORTAL: And mine is Failure;
you but mock the life you seek to bless.
Pass on.

THE NEW YEAR: Nay, open wide the door; I am Success.

MORTAL: But I am ill and spent with pain;
too late has come your wealth.
I cannot use it.

THE NEW YEAR: Listen, friend; I am Good Health.

MORTAL: Now, wide I fling my door.
Come in, and your fair statements prove.

THE NEW YEAR: But you must open, too, your heart, for I am Love.

新年―ある対話  エラ・ウィーラー・ウィルコックス作

生ある者: 夜は冷え、時は遅く、
世は荒れ果てて物憂い
戸を叩くのは誰か?

新年: 私は「元気」という者。

生ある者: 聞いたことのない声。お前など知らぬ。
私は暗闇を手探りする者。
ここに何の用がある?

新年: 友よ、私を入れなさい。私の名は「希望」。

生ある者: それなら私は「失敗」。
人を祝福せんとしてからかうだけのお前。
消えてしまえ。

新年: 否、大きく戸を開けなさい。私の名は「成功」。

生ある者: だが私は病いと痛みで疲れ果てている。
その宝物、やって来るのが遅すぎた。
使うことは出来ん。

新年: 聞きなさい、友よ。私の名は「健康」。

生ある者: それなら、大きく戸を開こう。
入れ、そしてその口先の言葉が誠なることを示せ。

新年: しかしその心も開かねばならんぞ、なぜなら私は「愛」なのだから。

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