西向く2機

前々回、「Southern California(長いのでSoCalと表記されることもある)では決して雨が降らない」というヒット曲を紹介しました。その歌詞に、主人公が西行きのボーイング747ジャンボ機に乗ったという、次の文がありました。
  Got on board a westbound 747.

また前回の歌「朝の雨」Early Morning Rainでは、ボーイング707機が登場する部分を紹介しましたが、実はそのあと、同機に再び言及する、次のような一節があります。

Hear the mighty engines roar.
See the silver wing on high.
She’s away and westward bound.
Far above the clouds she’ll fly,

Where the morning rain don’t fall
And the sun always shines…


男性が、早朝の冷たい雨の中、飛行場の草地に酔って座り、飛び立つ飛行機を眺めている場面です。
Sheは乗り物によく使われる代名詞で、ここでは707機を指しますが、それが滑走し、「遠くなり、西へ向かって雲の彼方へ消えていく」She’s away and westward bound. Far above the clouds she’ll fly.と、ここでまた「西へ」が。そして「そこでは朝の雨なぞ降らず、いつも晴れている・・・」と続きます。

西へ向かう、言い方。
go west、go westward、go westbound
take a westbound flight/plane (a westward bound …ではなく)
be動詞+westward bound (I’m/She’s westward bound)

東海岸からGo westとなり、海と晴天続きのハリウッド気候のある「西」へのベクトルが米国人に内蔵されているかのようです。「夜汽車よ!ジョージアへ」Midnight Train to Georgiaは、SoCalのL.A.で一旗揚げられず東の故郷へ戻る歌でしたが、この曲は未だ見ぬ明るい未来を渇望する歌かもしれません。ちなみに、中西部の文化が合わず故郷の東部へ戻る女性が汽車の中で昔の思い人に遭遇するという短編小説Hearts and Hands「心と手」(オー・ヘンリー作)は、ラジオでドラマ化した思い出深い作品のひとつです。

747

前回の最後にアルバート・ハモンドの曲「カリフォルニアの青い空」の歌詞の一部を紹介しましたが、その1行目

  Got on board a westbound seven-forty-seven (747).「西行きの747に乗り込んだ」

の747は「ボーイング747機」のことです。(I got on a westbound 747.とも言えます)。
 この横幅がぐんと広がった大型ジェットは、頭韻矢のごときjumbo jetの走りとか。

WikiPediaより

この飛行機の機種で思い出されるのが、もう1曲、PPMのバージョンで人気のあったEarly Morning Rain「朝の雨」だなぁ。遠く故郷を離れ、金も行くところもなく、酔って早朝の雨の中、恋人を想い、空港の草地に坐り、飛び立つ飛行機を眺めているという設定。カナダの国民的歌手ゴードン・ライトフットの詞の

  Out on runway number 9
  Big 707 set to go.

  But I’m stuck here on/in the grass,
  Where the pavement never grows.

  (これは「(草のように)滑走路が生えるわけもなし」というウィットだろう)

この「でかい707」はボーイング707機を挿す。

WikiPediaより。747よりスリムだ。

この707機の初飛行が1957年、Early Morning Rainのリリースが1966年。
747機の初飛行は1969年で、It Never Rains in Southern Californiaのリリースが1972年。
という訳で事実関係に問題無し。

ぼくの初飛行は1981年。たしかチャイナエア。飛行中あちこちで乗客が立ち話をしていた。紫煙も上がっていたような。

Heavens, things have changed.


It Never Rains in Southern California

これはアルバート・ハモンドのヒット曲のタイトルで、1972年リリースとあるから、まだ海を渡ったことのない頃に、日本中に流れていた唄でした。嘘だろう?と思ったのだが、そのしばらくあとにサンフランシスコ・ロサンゼルスの旅に出たときの記憶に雨の日はない。
 ハモンドの唄は、「南カリフォルニアでは雨が降らないようだけど、もう降ること、降ること」とサビで盛り上げる。このpourは、It never rains but pours.(降るときは必ず土砂降り)、あるいはもう少し新しいWhen it rains, it pours.、つまり「悪いことは一度に来る」ということわざにあるpourなのです。いいことばかりの新天地だと思い込み、一旗揚げようとやってきた男が、聞いてないぞぉ、甘かったぁと嘆く内容で、「夜汽車よ!ジョージアへ」や「サンホセへの道」に通ずるものがある。
 ただ気候面ではドライそのもので、孫二人が育つ同地方のカラバサスは、10月におそらく初めて(今年!)の、そして今2度目の豪雨に見舞われているという報告と写真が届いた。といっても、頭韻も恐ろしいflash floods(突発性の洪水、鉄砲水)のそれではなく、孫娘が生まれて初めて外で雨にあたり、お兄ちゃんも入って、小雨の中、楽しそうだ。

Keep on smiling, Mori chan and Riki chan.

人生60あたりで打ち止めと思っていたのだが、アルバート・ハモンドから随分長く来てしまいました。
では最後に、It Never Rains in Southern Californiaの出だしをどうぞ。

Got on board a westbound 747.
Didn’t think before deciding what to do.
Oh, that talk of opportunities, TV breaks and movies
Rang true, sure rang true.

Seems it never rain in southern California.
Seems I’ve often heard that kind of talk before:
“It never rains in California.”
But, girl, don’t they warn ya!
It pours, man, it pours.

はらはらと枯葉ら水路に落ちて候 

It’s time to collect some of them and put them underground. They’ll make a great fertilizer.(^_^)

Fall seems to come to me to remind me of the next passage from the Bible. Although I’m not a Christian, I can’t say no to it.
Part of it was made into a song, I believe, and it was sung by Joan Baez if my memory serves me right. If it doesn’t, well, it’s ITS fault, not mine.(^_^)

          ********

To every thing there is a season, and a time to every purpose under the heaven:

A time to be born, and a time to die; a time to plant, and a time to pluck up that which is planted;

A time to kill, and a time to heal; a time to break down, and a time to build up;

A time to weep, and a time to laugh; a time to mourn, and a time to dance;

A time to cast away stones, and a time to gather stones together; a time to embrace, and a time to refrain from embracing;

A time to get, and a time to lose; a time to keep, and a time to cast away;

A time to rend, and a time to sew; a time to keep silence, and a time to speak;

A time to love, and a time to hate; a time of war, and a time of peace…

             Ecclesiastes 3 King James Version

有名人と似ていると言われたら

けっこうやっかいな発言です。
誰に似ているのかにもよりますが、そう言われることがたまにあるなら(あまりなくとも)、とりあえず、

  I get that. / People say that.「そう言われることあります」
  Really? I usually don’t get that/hear that.「そうですか? あまり言われませんが」

あたりを使い、お終いになるよう祈りましょう。

よくあることなら、

  I get that often./People say that often.
  I get that a lot./People say that a lot.

と頻度を表してもよいですが、とにかくどんな有名人に似ているのかが引っ掛かりますね。それが億万長者で、あなたが百万長者なら、その「差」に相手の意図をはかりかねることにもなるでしょう。また、美男美女のセレブと比較されたとなれば、

  Oh, thank you! That’s flattering!「お世辞にもありがとうございます!」
  Really? You just made my day!「ええ? なんといい日になりました!」

あたりは必要ですが、相手がしつこく話を続ければ、Is s/he hitting on me?「自分を口説いている?」といった疑問も浮かびます。また、そのセレブについての話に持っていかれれば、S/he’s using me to talk about her/his favorite person.「大好きな人の話をするために私を使っている」という否定的な気分になるやも知れません。And vice versa.「そして逆(の立場になって)も(考え方は)同じ」です。

You look like me.

P.S. 加齢なる人生を送る者にとって、こうしたコメントを耳にする機会はもうあまりありません。
たとえYou look like Alain Delon.と言われたってあなた・・・You know what I mean.

「夜戸出」

古語「よとで」とは、夜に外出することで、万葉集にこの歌がある。

  我妹子が 夜戸出の姿 見てしより 心空なり は踏めども

  わぎもこが よとでのすがた みてしより こころそらなり つちはふめども

 思う人の夜の外出姿を見て、舞い上がるこのハートよ、という作品のようだが、出る側、見る側それぞれに関して、いろいろな物語がふくらみそうで興味深い作品だなぁ。(night stalkerという危うさもありかな。)
 万葉の頃の夜はどうだったのか。外には街灯もコンビニも、手には懐中電灯もない。
 それにしても、「こころそらなり つちはふめども」は、そのイメージや響きのよさで、美事とぞ思ふ。
 「戸出」という言葉に夜が付いているので、「戸出」は更に古い表現かも知れない。

ちょうどいい長さの仲見世通りと夜戸出の人々

富山県高岡市に「戸出(といで)」という町がある。油田(あぶらでん)という駅もある。一帯が灯油(ひあぶら)の元になる植物油の生産地だったことから、「ひあぶらでん⇒とうゆでん⇒といで」と読みや漢字の変換が起こったという。加賀藩から江戸初期に分藩された富山藩は、物流の要となる戸出地区開発の通達「戸出野開御印」を受けた。新藩は「『戸』を『出』でて『野』を『開』く」という思いを込めて取り組んだという。改めた地名に魂が宿ったような興味深い話だ。

古代や近世のこうした例を見るに、夜戸出、戸出とは、なかなかいい言葉ではないかな。

さて、なぜ急にこんな話になったのかというと、ここしばらく使っている言葉night walkerの分が悪いからだ。素直に「夜の歩行者・散歩者」で通ってほしいのだが、そうなりにくい定義があり、late night walkerにしようか、前回の最後のご教訓にあるようにnight amblerで行こうか、かつ日本語でも何かいい言葉はないかなと思い、まずは古語を訪ねたところ「夜戸出」にぶつかった。夜戸出人「よとでびと」がいいかも知れないなぁ。

モノレール通過を待つ夜戸出人の影。心空なり地は踏めども。おお、応用。

ナイトウォーカーの聖域 Sanctuaries for Night Walkers

Seven-Eleven After Eleven

Omotenashiの一部を成すIt’s safe at night.という文句は絶対的なものではないけれど、ぼくは五体満足で何とかここまで歩いて来た。
 車はというと、ハワイ州の免許は取得したけれど、何度もドボンするパドルボーディングのほうがまだうまいと自他共に認める腕前だけに、Sunday driverどころかsomeday driverというのが自分の正当なステータスだ。
 一方、歩くのはそれなりに、昼夜を問わず、気が向けば夜の2時でも朝の4時でも、車のない道を行く。それにジェレマイア・ジョンソンやヘンリー・ソローのように大自然の中で暮らしているわけではないので、長くても2,30分歩けば、コンビニというサンクチュアリの灯が迎えてくれる。冬ともなれば、おでんや肉マン、ホットドリンクなどがあるので有り難さ倍増だ。

A Full Moon Over Lawson

今日の教訓 「老ナイトウォーカーは死なず、ただコンビニの中に消えゆくのみ」
Lesson of the Day: Old night amblers never die; they just fade into a convenience store.


 
 

A Little Green Pepper

小さいのがいくつもまだ頑張っているので1個もぎる。
今回は小さすぎて刺身にせず、そのまま食す。なんと甘い。
すぐにタネまで到達。さあ、困ったね。
しばしキーボード前で思案。
結論は、Dirty Harry Magnum Forceの締めゼリフを借用。(^_^)

“A man’s got to know his limitations.”