「消えた少女の歌」 『アウトランダー』で見つけたスティーブンソンの詩

スコットランドの詩人で小説家のロバート・ルイス・スティーブンソンの詩Sing Me a Song of a Lad That Is Goneは、同国のThe Skye Boat Songなる民謡の歌詞がイングランド人によって書かれたことに義憤を感じて自ら書き直し、それが定着し、唄い継がれています。

その詩が発表されておよそ130年後の今、人気SFシリーズ『アウトランダー』(現代と18世紀スコットランドが舞台)の主題歌にもなっています。シリーズでは主人公が女性で、lad(少年)がlass(少女)に替わり、ここではそちらを元に拙訳。お役に立てば幸甚です。現代英語で語りかけてくるような作品です。

Sing Me a Song of a Lass That Is Gone

Sing me a song of a lass that is gone,
Say, could that lass be I?
Merry of soul she sailed on a day
Over the sea to Skye.

聞かせてほしい 消えた少女の歌を
ねえ あの少女は私のこと?
心踊らせ ある日船出した
海を越え スカイ島へ

Mull was astern, Rum on the port,
Eigg on the starboard bow; 
Glory of youth glowed in her soul;
Where is that glory now?

船尾にマル島 左舷にラム島
船首右舷にエッグ島
青春の光が 心にきらめいた
あの光 今どこに?

Sing me a song of a lass that is gone,
Say, could that lass be I?
Merry of soul she sailed on a day
Over the sea to Skye.

聞かせてほしい 消えた少女の歌を
ねえ あの少女は私のこと? 
心踊らせ ある日船出した
海を越え スカイ島へ

Give me again all that was there,
Give me the sun that shone!
Give me the eyes, give me the soul,
Give me the lass that’s gone!

戻してほしい あそこにあったもの全て
戻して あの輝く太陽を!
戻して あの目 あの心を
戻して あの消えた少女を!

Sing me a song of a lass that is gone,
Say, could that lass be I?
Merry of soul she sailed on a day
Over the sea to Skye.

唄ってほしい  消えた少女の歌を
ねえ あの少女は私のこと?  
心踊らせ  ある日船出した
海を越え スカイ島へ

Billow and breeze, islands and seas,
Mountains of rain and sun,
All that was good, all that was fair,
All that was me is gone.

大波とそよ風 島々と海
雨と陽の注ぐ山々
あの良いもの全て 美しいもの全て
私だったもの全てが 消えた

Sing me a song of a lass that is gone,
Say, could that lass be I?
Merry of soul she sailed on a day
Over the sea to Skye.

唄ってほしい  消えた少女の歌を
ねえ あの少女は私のこと?
心踊らせ ある日船出した
海を越え スカイ島へ

(最後のスタンザは『アウトランダー』に準じて加えました)

この詩のSkye(スカイ)とはスコットランドのベブリディーズ諸島にある島で、詩の中のover the sea to the Skyeという部分が現在観光用のキャッチフレーズになっているとのこと。詩の中には他にMull、Rum、Eiggという同諸島の島が登場します。

スティーブンソンは取っつきやすさを信条にする詩人で、私は詩集『幼年詩苑』A Child Garden of Versesを18歳から20代にかけてよく読み、そのリズムやイメージや韻に感動しました(12歳で英語を始めた私は、実年齢マイナス12を英語年齢としているので、幼年6歳頃出会ったことになります。今はもうメチャクチャでござりまするがなですが・・・)この詩の自然なもの言いも、時代を超えて迫ってきます。ああ、あの頃の詩にも、こうしたフレンドリーなものがあるのかと、大安心の段でありました。

これは言うところのa song about lossですが、消えた少女・少年の残像が北の島々や海に漂い、バグパイプの調べが聞こえくるようです。メロディは様々で、次のリンクはアウトランダーのプロモーションビデオです。

Outlander theme: https://www.youtube.com/watch?v=JGLwdcR1yRU

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