Time flies like an arrow.考

また1年が終わらんとしています。終わらんといけませんかと尋ねたいほどです。英語ならここで
  Where does the time go?(時間はどこへ行くのでしょう?)
  Where did the time go?(時間はどこへ行っちゃったのでしょう?)
そして
  Time flies.(時間とは飛んでいってしまうものですね)
などと言うわけですが、ちなみに最後の表現は英語ではfliesでピリオド。日本語のように「矢の如し」は付きません。

 英語圏のユーモア志向の人々は、日本人がよく「矢付きで」、
  Time flies like an arrow.
と言うのを聞きつけては、そのあとに
  (But) Fruit flies like a banana.
と付け足して、共に笑ったり驚いた表情を作ろうとします。

  Time flies like an arrow; fruit flies like a banana.

 私が仕事を始めた70年代には、英語の言葉遊びに興味を示す変な日本人教師のために、職場のネイティブスピーカーの何人かが、このセットを口走り、目をくるりと回してはおどけていましたので、このセットはそれ以前から存在していたようです。これには2つの”意味”が雑居しています。

  Time flies like an arrow; fruit flies like a banana.
 
 ”意味”1。「時は矢のように飛び、フルーツはバナナのように飛ぶ(冠詞がないので「果肉は」がベターですが)」これだけだと丸で無茶苦茶、花菱アチャコであるのですが。

 ”意味”2。「トキバエは矢を好み、ミバエはバナナを好む」。これはまず、time flyというハエがあると仮定して、その複数のtime fliesは矢が好きである。一方、ミバエ(こちらは本物で、果物に卵を産むハエの一種fruit fly)の複数fruit fliesはバナナがすきである、という意味になります。

  Time flies like an arrow; fruit flies like a banana.

 fliesは動詞であり、名詞の複数形にもなります。likeは前置詞であり、それが動詞にもなります。ここがミソです。

 前半は良いとして、後半に来るとどうつながってこうなったのかということが分からなくなり、前半に戻って考え直す。相手にこの作業を繰り返させて”楽しませる”というのが、このセットの目的のようです。

 さらに昔、高校時代に市立図書館で、メビウスの輪という、細長いい紙片を一度ねじって両端をつなげた輪のことを知り、その場でノートのページを破って試し感動したことがあります。(これは発見者の一人の名を冠してMöbius strip、Möbius bandと呼ばれていて、英国でマーヴィアス、米国でモウビアス)。それから家に帰って正式にのり付けしてみると、表だったものが裏になったかと思うとまた表になって延々と続き、鉛筆を動かさずに、裏表(のない表面)に1本の線が引かれるではありませんか。これは私にとって正に”紙技”でした。

  Time flies like an arrow; fruit flies like a banana.

 黙読や音読をしながら迷い込む言語遊戯の奥の院でしょうか。メビウスの輪的言語世界でしょうか。師走のピーク時にお邪魔しました。

IMG_1043 
芭蕉の花序にヤモリ A Gecko on a Banana Heart

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