米大統領予備選関連のニュースのヘッドラインに、時計clockを使った表現が2点使われています。どちらも主語はジョー・バイデンで、
1)Joe Biden turns back the clock(JB時計を巻き戻す)
2) Biden ‘cleaned Sanders’ clock’(B、サンダーズの時計を掃除)
1)は「JBがBS(バーニー・サンダーズ)の優勢をひっくり返して以前の力を取り戻した」ということ。こちらはイメージをつかみやすい。
2)は「BがSを打ち負かした」という意味。cleanには「叩く、打ち負かす」というスランギーな意味があったところ、clockの一部で、かつ一大特徴である時計のface(文字盤)と人間の顔とを連結。clockでfaceを表すことを暗黙の了解として、clean someone’s clockに、a)誰かの時計を掃除する、b)誰かを叩きつぶす、という重義を込めるという、隠語風な表現を誕生させたということらしい。
今ならfaceのない時計はざらにあるけれど、これは20世紀初頭に生まれた表現です。
なお、あるものの一部で全体を表したり、逆に、全体で一部を表すレトリックをシネクドキ-と呼ぶ。例えば、
一部で全体:「手」で人間。the wheelsでcar。
全体で一部:「鳥」で鶏。LiverpoolでFC。
今回のclockと言ってfaceを表すのは「全体で一部」式シネクドキ-の一種だけれど、どこか密やかなところがある。ただ現在は隠語的領域は脱したイディオムとなっています。
時計といえば、先週、掛け時計が遅れた。朝10時40分、まだ時間はあると思って悠々と台所へ行くと11時20分! 慌てて飛び出し間に合った。
締切狼や約束狼に囲まれることがよくある自分の現状を英語でこう言えるかも。
It’s chronically a race against the clock.(慢性的に
時間との闘いです)
日本語の「時間との闘い」に当たるのがこの「時計に対抗するひとつのレース(和訳)」だ。自分なりに長い間書いてきたのだから、次第にスピードがつくだろうと思っていたのは大間違いだった。
それはともかく、先週起こった時計の失速は、
It was a clock against the race.(レースをぶち壊そ
うとするひとつの時計)
であったような。これを
My clock almost cleaned my clock.
と言ったらいかがなものか。