西沢杏子さんの虫たちをテーマにした詩を拝読していくと、児童文学という枠組みから羽ばたいて飛び出だしていく自分がある。たとえば「ふた星てんとう」のように、読後に牛より長い反芻が続いてしまったり、虫の姿を見たくなったりする。ゲンゴロウが、ミンミン蝉が、よくわからんヤスデや戸立て蜘蛛など、虫の面々が次々に登場しては、感動させたり笑わせたりむしゃむしゃさせたり驚かせたりする。
ふた星てんとう(「詩集虫の葉隠」より)
確かなものを ひとついおうか
はじめてきみと出会ったときの
きみの背中の赤い星
ぼくの背中ももってるはずの
ぼくには見えない赤い縁
たしかなものを もひとついおうか
はじめてきみに迫ったときの
きみの背中の赤い星
ぼくの背中ももってるはずの
ぼくには見えない丸い拒否
転倒しそうになって思い出すのが、米国のボクサー、モハメッド・アリの、”Float like a butterfly, sting like a bee.”「蝶のように浮かび、蜂のように刺す」なる名言。西沢蜂に刺されると、もう一丁!といって次へと進む。
短編集新刊です。Dr. Cats

西沢杏子さんのブログ:「虫の落とし文」https://www.ne.jp/asahi/mushino/otoshibumi/