ハンク・アーロン

African-Americanとして、CaucasianのBabe Ruthのホームラン記録を破ったハンク・アーロン選手は人種偏見に満ちた膨大な数の手紙や電話を甘受したという。

私が彼の存在を確認したのは、彼が一線を退いて数年たったころに出会ったクロスワード上の”Basball great”や”Home run king”というカギを通してであり、それも頻繁に出て来るからだった。

アーロンがホームランを755本でなく1000本打っていたとしても、彼の名前がエンゲルベルト・フンパーディング的なものであったなら、白黒のグランドに登場することはそれほどなかったに違いない。彼がこのパズルに顔を出す大きな要因には、その苗字のスペル

AARON

があるのだ。モーゼの兄弟の名でもあり、エルビス・プレスリーのミドルネームでもあるのだが、私はこの野球選手の有名度を数日に一度、少なくとも週に一度は感じ取ることになった。

ただ、それ以上のことを知る動機を持たないまま、この度のご訃報に至る。

巨人の遊撃手広岡達朗選手がゴロをすくっては優雅なアンダースローで1塁に投げるときに見える背番号2のファンであった私は、少年野球チームの背番も2でありました。が、背番号3がショートへの球を取りにサードからささっと出て来始め、やがて広岡が他球団の監督に就任してからは、私も巨人軍を離れた。背番号1がホームランを量産していることは見知っていましたが、要するに、それ以来野球への興味は薄れていったということを言いたいのであって、AARONに遭遇したころは、アメリカの球界にも全く興味を持っていなかったのだが、スペリングというのはなんとも不思議な力を持っているものだ。
spellという名詞は「魔力」という意味を持つが、ここで色々な意味を持つspellの語源の複雑な話ははしょるとして、とにかく奇妙かつ短い綴りの苗字を持つ有名な人物は、死語もその名をクロスワードに長く残す可能性大である。Aaron選手もその一人に違いない。
亡くなって初めて、BLMの波の中で、その人生の一端を知ることになりました。RIP

クロスワードで、これまでに多くの名前に遭遇し、そこからその人物について知るチャンスを得ている。このパズルの与えてくれる大きな楽しみのひとつだ。


オートパイロット

on autopilot「自動操縦で」「オートパイロットで」という表現が、乗り物の世界を離れ、「自動的にやれる、何も考えずにできる」という意味でイディオム化(慣用句化)している。その例を2件。

まずポール・マッカートニーの談話。「エリナー・リグビー」を唄うときを例に出して、いかに歌詞が自動的に出てくるか(”I’m on autopilot.”)、ただし今日は何を食べようかなどと考え出すと歌詞が出なくなる、そのときは有り難いことにテレプロンプター(teleprompter)がある、といった裏話をしています。

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ボブ・ディランも忘れるのだろうか。次は米国経済立て直しのため、ドルの印刷機を惜しみなくオートパイロットにせよ、という記事のタイトルです。

前向きのスピーチ forward-looking speech

米新大統領の演説が行われるという記事の見出しです。

将来に目を向けた積極的な、という意味の形容詞。日本人にもわかりやすい。

前向きで野心に満ちたもの:His speech was forward-looking and ambitious.

将来を見据えた、過去を振り返らぬ: Much of her speech was forward-looking and not looking back.

頭韻発見 様々な変異種 Various Variants

たくらんだ頭韻表現もあれば、偶然に言ってしまうものもあります。

CNNニューズショーホスト: ワクチンはいろいろな変異種に対して効き目があるのでしょうか?
“Will the vaccine work against the various variants?”

「様々な変異種」 various variants  両語は語源が同じ 頭韻部が”長め”なので際立ち覚えやすいかも ややしつこい印象も

もうすこし加えると

「ウイルスの様々な変異種」 various virus variants

何だかウジャウジャと。頭韻のしつこさは考えものかもしれません。

こうした例も含め偶然や企みの頭韻フレーズはある意味覚えやすくmany, many more!です。

forebear(先祖)のbearとは?

The Word of the Dayが毎日のように送られてくる。何かの約束をどこかでしたに違いない。今回はこのforebearが。

語源を推量すればforeはbeforeという意味でしょう。
問題は後半のbearだが、まさか「熊」ではないだろうとオンライン語源辞典
   https://www.etymonline.com/
へ行ってみると、これは
   be+er、「beをする人」「存在する人」
という行為者名詞。
全体で「以前+存在する人」と熊なく理解ができた。

beと言えば、The Bard(シェイクスピア)のTo be or not to be….を思う。
toには「・・・へ」という方向性を表すため、今後のことを示すニュアンスがあることから、かの名セリフは「今後存在するか、今後存在しないか、問題はそこだ」と素直に解釈することも可能。

forebearに話を戻して、
  We can trace our forebears back to the 1830s.
  うちの祖先は1830年代までわかっています・遡れます。

ancestorsに差し替えてもよい。
こちらは、ante(before)+cedere(to go)、つまり「先行」を語源に持つ。

ancestorは最も一般的。One of our ancestors owned this lake.などと先祖の
自慢をしたいときにも。
forebearはforebearsと複数使用が普通で、「祖先」といった客観的ひびきあり。

大寒の大根と松田先生

一昨日、目黒八中2年E組の担任であられた松田守隆先生から蜜柑と大根の漬け物をいただいた。

 2Eには8ヶ月ほど在籍し、運動会が終わった頃に7年住んだ東京から水戸へ移った私は、大学通学でまた東京へ戻るまで、入試情報なども含め、お手紙やアドバイスを頂いた。先生はその後、故郷である愛媛県に移られた。クラス会に一度顔を出しただけの私に20数年が通り過ぎたころ、突然電話があり、先生が拙宅にいらっしゃることになった。気になった生徒のところまで距離を厭わず足を運ばれる方であることをそのあと知った。
 ご担当の職業家庭の時間に製図の課題が出た。原図はモーターの断面図で、その上にトレーシングペーパーを敷き、烏口コンパスにインクを足しながら線を引いて写していく。ところが何度やっても途中で烏口から墨が漏れてしまい、繰り返しやり直すうち朝になっていた。生まれて初めての徹夜、あの体がほてって浮くような新しい感覚。登校し、出来なかったことを伝えると、もう少し頑張るようにと仰った。「融通を効かせてもらう」という実体験の記憶はこれが最初だったように思う。徹夜をしたんだからという自負のようなものも手伝って、その翌日だったか翌週だったか、とにかくやっと完成したトレーシングペーパーを提出することができた。木製の折りたたみスツールを作ったのも先生の授業であり、それはまだ持っている。
 先生に訪問いただいた数年後、私はNHKラジオの番組を担当することになり、高知市で講演があった折に、先生が当時校長をされていた中学校へ招かれた。高知駅から土讃線に乗り四万十川を越え、中村線に乗り換えて終点で下りると笑顔の先生がいらした。そこから愛南までドライブしていただき、初対面での英語、廊下ですれ違うときの英語、エレベーターを使うときの英語などなど、生徒さんたちと舞台で練習などして講演を終えた。お宅では奥さまにお目にかかり、鰹料理をごちそうになり、泊めていただき、翌日はまた駅まで送っていただいた。
 先生は広い畑で野菜を作っておられる。最近は渡り鳥や猿の盗賊団が襲来するそうで、時々電話で話を伺う。被害にあう野菜も多ければ残る野菜も多いようで、いただいたのはラッキーな大根に違いない。先生は私より10年多く生きていらっしゃる。僕が10年後にこの世にいて、自作の大根で漬け物を作れるかなと考えた。声の張りにほとんどお変わりがないのは凄いことだと思ったり、大学ご卒業後の最初の担任クラスが我々であったこと、教えるクラス2年分の生徒名を全て覚えられたという伝説や、先生主導でE組が運動会に優勝したあの瞬間のことなどを思いながら、タッパウエアに入ったこの漬け物をポリポリといただいている。
 愛南のお宅の夜、私がトレーシングペーパーと烏口コンパスの思い出を話すと、先生が「あれはなあ、ぼくも授業の前の日まで練習したんよ」と仰った。有り得ない一瞬。とても暖かいものが私の胸一杯に流れ込み、爾来消えない。
大寒直前の、冷蔵庫に入れても暖かい大根。柚が何ともよく効いて。
 Why don’t 柚 it yourself?ですか? 大根を育てること以外は真似できるかもしれません。

水で濡れた

英語島で見かけた日本人向けのポスター。英語の命令形のニュアンスを日本語に平行移動するのはなかなかですが、「・・・する」という形がうまく行っていると思います。
最初のWash your hands.は、やはり「手を洗う」や「手を洗いましょう」がベターな和訳ではないでしょうか。

英語で言うときの気持ちも、早川雪洲が眉間に縦皺というより、浅野忠信的「洗ってくださいね」Be sure to wash your hands. あたりが適切かと思われます。

それにしてもころなかでは「水で濡れた」が異彩を放っていますね。

思考キャップ考

クリスマスに娘からもらったのがこのThinking Cap。

英語イディオム表現に

  I need to put on my thinking cap. 思考帽を被る必要が。

があり、「これは知恵を絞る必要がある」という意味で使われます。

これを被っていると、知らない相手に話しかけることがあまり苦にならない文化圏では、

  Is it working?(効果があるんですか?)
  How’s it working?(効果のほどは?)

などと訊かれることがあります。実際、英語島の空港でタラップを上がり、機内に入ろうとしたとき、迎えるキャビンアテンダントの一人が、Is it working?と尋ねてきました。一瞬何のことかと思い、Pardon me?と返すと、Your cap.と指差すので、

  Oh, sorry. I wasn’t thinking.(あ、ごめんなさい。ぼやっとしていて)

と答えると、笑いと共に、

  That’s a cute one.(キュートな答え)

という感想が返ってきました。はは。この手は今後使えそうです。

ローマの北極熊

いわゆる寒中水泳を英語では

polar bear swim 北極熊水泳
polar bear plunge 北極熊飛び込み
polar bear dip 北極熊一泳ぎ

などと言います。日本や英語圏に限ったイベントではないようで、例えばローマ市内を流れるテベレ川に飛び込む男性の勇姿がそれを物語っています。

https://www.nbcnews.com/video/divers-brave-icy-tiber-river-in-traditional-roman-new-year-celebration-98680389998

キャプション
brave … ここでは「・・・に勇敢にチャレンジする」という意味の動詞。動画では見物人が「コラッジョ」(courageのことらしいですが)を連発しています。

the Tiber River あるいはRiver Tiber 英語では「タイブー」。双子の兄弟が赤児の頃この川に捨てられ、それをオオカミが救って育て、彼らはローマ建国の祖となったという伝説あり。中学3年でこの話を暗記して暗誦大会に出たこともありました。遠山は2位。一位は八剣さんという、とても勝てそうにない名の少女でしたが、いまどうしておられるかな。人前で英語を発する初めての体験でした・・・テベレ川の北極熊、狼、人間のお話・・・でした・・・

NO EVIL

whole foods自然食品の店を覗くと、あるブランド名が目に付きました。

『2001年宇宙の旅』。月面を低く進むthe moon rocket busの中でサンドイッチが配られ、フロイド博士がその宇宙食を見て
  They look pretty good.
とコメントする。そしてとても美味そうに、かつ少量ずつ咀嚼する。そのあとコーヒーになる。私の場合、猫バスより月バスに乗ってみたい理由がここにあります。
 そのシーンを思い出したのは、このNO EVILブランドが植物タンパクで作られた食品を扱っているからで、かつ、2021年になっても、いまひとつ手が伸びそうにない自分が面白い。

ちなみにすでに気付いた方もいると思いますが、言葉のひっくり返しをよくする者として一言。このブランド名を逆読みすれば
  LIVE ON
になる。
 LIVEという言葉はしばらく遊べる単語で、EVILがレジデントで、LIEが出てはVEILで覆い、VILEなことも多く、VIEで競争したりと忙がしい。LIVESならELVIS登場、LIVEDならDEVIL登場。苦労の末にはLEIも待っています。

ルイス・キャロル発明のDOUBLET形式で挑戦すると手こずるかもしれません。1度に1文字変えていきます。

EVIL

EVEL   Evel Knievel, famous American stunt performer

EVEN

OVEN

OVER

ONER

ONES

OWES

AWES

ACES

APES

APTS   apartments, abbr.

OPTS

OUTS

CUTS

CUTE

LUTE

LITE

LIVE

EVILの次が面倒で固有名詞に頼ることも。別の手も多々あるはず。完成の暁にはお送りください。